【exhibition】安藤裕美 残暑特選版画展
2025.9.3wed-21sun/closed 月・火・水
12:00-18:00(日:12:00-17:00)
残暑の厳しい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
この度、版画展を開催することになりました。
版画を刷っていただている版画工房カワラボや、私が10年以上活動に参画しているパープルーム、そしてオーセンティックバーの様子など日常のなかで出会った印象的な場面をとどめた版画を作りました。描かれている出来事は一瞬ですが完成までには長い時間を要します。
私はその時々の自分にとって新鮮な動機がないと絵に集中できないので同じシーンを繰り返し描くことはあまりありません。
例えば《夜のパープルーム》は初めて描いた銅版画です。描かれているのはパープルームが活動の始まりから10年間拠点としていた場所です。引き払ったのはたった半年前ですが遠い昔のことのように感じます。当時のことを振り返ると、深夜ここで制作していた時に外から聞こえてきた改造バイクが走り抜ける音や酔っ払いが喧嘩する声、隣のスナックの客のカラオケなどが印象に残っています。
《カワラボにてプレス機で銅版画を刷る今泉奏と制作中の梅津庸一》は2枚目に描いた銅版画です。この作品の制作時は同時にパープルームTVのための収録もしていました。工房の仕事はとても魅力的で私は撮影に夢中になり、銅版を腐蝕液につけているのを忘れてしまい腐蝕が進みすぎて一度、真っ黒な版になってしまいました。それから朴炭で磨いて再び描画し、ようやく完成にいたりました。画中のプレス機で私の版画作品も刷られています。
《カワラボにて平版自動校正機で「梅津庸一 クリスタルパレス」展の壁紙を刷る平川幸栄、畠中彩》平川さんがインクを調整し畠中さんが紙をセットしています。この機械は趣味で版画を嗜む人から巨匠まで様々なリトグラフ作品を刷ってきました。現場を見ながら版に直接スケッチしたので、現実とは反転した図像になっています。
《喫酒幾星でギムレットを飲む梅津》幾星は梅津さんが数年前から通っている京都のオーセンティックバーで薬草リキュールを専門的に扱っています。私も時々梅津さんと一緒に幾星にいきますが、カクテルに詳しくないのでバーテンダーの織田さんにおすすめのカクテルをお願いしています。いつもすっきりと飲みやすく素敵な香りのカクテルをつくってくれます。バーテンダーによってシェイカーの振り方は様々ですが、以前見た時、織田さんは手首から先をリズミカルに3拍子で動かしていました。振りながら手に伝わる温度や振動を感じ取ってシェイクの度合いを図るそうです。
私はいつも自分の専門分野を突き詰めている人たちに惹かれます。
ちなみに今回の個展は「特選版画展」とついていますが、私のこれまでの銅版画ほぼ全てが揃います。ぜひご来場ください。
これからも暑い日が続きそうですが、皆さまお身体にはお気をつけてください。
安藤裕美
会場:WATERMARK arts & crafts
186-0002 東京都国立市東2-25-24-2F tel:042-573-6625
安藤裕美 ANDO Yumi
1994年東京生まれ 2014年パープルーム予備校1期生 『美術手帖』にて漫画「前衛の灯火」を連載。
主な個展
2020 「光のサイコロジー」 オンサンデーズ、東京
2021 「美しい生活」 渋谷PARCO「Meets by NADiff」WALL GALLERY、東京
2023 「学舎での10年をめぐって『ナビ派』と『パープルーム』への眼差し」 パープルームギャラリー、相模原
2025 「ものをつくる人々」 六本木ヒルズA/Dギャラリー、東京
主なグループ展
2014 「パープルーム大学」 山下ビル、愛知
2018 「パープルタウンでパープリスム」 パープルーム予備校などの関連施設6か所、神奈川
2021 「絵画の見かたreprise」 √K contemporary、東京
2025 「表現者は街に潜伏している そして、ショッピングセンターは街そのものである」 パープルームギャラリー(ダイエー海老名店)、神奈川